SEの危機!「とにかくやるしかない!」
◆誰もが経験する「とにかくやるしかない」時
人によってシチュエーションは様々ですが、
SEであれば、誰もが経験することがあります。
それは
「とにかくやるしかない」という状況に
追い込まれてしまう時です。
納期までもう時間がない
過去に埋め込んだバグが発見された
予定していたメンバーが離脱してしまった
当初は想定していないものから
薄々感じていたけど、やっぱりそうなった
なんてものまで状況は様々です。
そんな厳しい状況に直面しつつも
ユーザー、クライアントに対しては
当初の約束を守らないといけない
(自分自身が約束したものでなくても)
どう考えたって厳しい
どう考えたってうまくいかない
と感じたとしても
「とにかくやるしかない」という状況に
自分自身が置かれてしまう時があります。
大変な状況であり、そのこと以外は、
もうあれこれ考えている余裕もない
状態です。
しかし、こんな時こそが、
最悪の場合、
自分がSEを続けられなくなってしまうような、
危険な状況にあることを
SE本人は気がついていなかったりします。
◆「仕事だから当然」と考える状態
仕事をずっとやっていれば、
想定外の事態は必ずおきるものです。
「え、聞いてないよ~」
「どうしよう、全く考えていなかった・・」
こんな風に言葉に出して
その事態が回避されるなら楽なのですが
現実はそう甘くはありません。
とりあえず、やらなければ、仕事なのだから・・
そう、これは「仕事」
仕事だから、やるべき事をやるのは当然
仕事だから、納期を守るのは当然
仕事だから、大変なのは当然
仕事だから、相手を満足させるのが当然
こんな風に考えて
「とにかくやるしかない!」と結論付けて
仕事に向かっていく人が大半だと思います。
でも、こんなふうに考えて仕事をしている人は
とても危険な状態と隣り合わせになっており、
本人はその状況にいる事に気づいていません。
「仕事なんだからちゃんとやりきろう」
「約束はちゃんと守ろう」
この考え方自体は何も悪いことはありません。
まったくもって真っ当な考え方です。
問題は、「やらなきゃ」と考えたら
「そのあと」「それ以上」「それ以外」の事を
考えるのをやめてしまうことです。
「それ以上」「それ以外」で、
考えないといけないものとは?
それは「自分自身」のことです。
「とにかくやるしかない」
この言葉の前にこんなフレーズを
加えてみてください。
「自分が病気になってしまっても」
とにかくやるしかない・・仕事なんだから
「仕事が嫌になってSEを続けれらなくなっても」
とにかくやるしかない・・仕事なんだから
「自分の周りの人が不幸になったとしても」
とにかくやるしかない・・仕事なんだから
こんな言葉を付け加えて
とにかくやるしかないというフレーズを読むと
答えは絶対に「NO」になるはずです。
そして、こうも思うはず・・
そこまで犠牲を払ってでも
やらないといけない仕事ってなんだ?
でも、とにかくやるしかないと結論付けると
そこで思考は停止します。
そして、このハードな状況下で
ひたすら仕事をがんばる
とにかくがんばる、
とにかく目の前のものを片付ける
そんなふうにがんばっている中で
いつの間にか
ため息が多くなり
睡眠時間が削られ
食欲がなくなったり、
過度な食事をするようになったり・・
そして、ある日突然やってくる
「もう無理・・・・」という状態。
気づいた時にはもう手遅れ
手遅れにならないと気付けないのが
この「とにかくやるしかない」状況の
一番怖いところです。
◆実際にあったギリギリの時の話
とある現場にいたころの話です。
突然発覚したリリース済みのシステムのバグ。
突貫体制でバグを修正することになったのですが
影響範囲の特定が難しくそれを調査するだけでも、
とても時間が掛かり完了までは、
徹夜を2回挟んで丸3日
ということがありました。
ユーザーの業務には、そのシステムの
処理結果が必要です。
しかし、バグのあるシステムでの結果では
後続のユーザー業務ができません。
とりあえず、もうやるしかない状況。
しかも、大至急。
そのリカバリー対応は、
本当にきついものでした。
対応できるメンバーをかき集め
最大15人以上が作業していました。
みんな早くこの難局を終わらせたいので
誰もサボったりせず、全力でがんばるのですが
そんながんばりも、1日目の徹夜を超えて
2日目の徹夜に突入するころには、
もう風前の灯火。
みんなヘロヘロ。でもやらないと終わらないから
とにかく手を動かします。
3日目に突入するころ、
初日から対応しているメンバーで
家が近い人は、一旦家に帰って
仮眠してもらおうという事になりました。
仮眠といっても、
わずか数時間でまたこの現場に
帰ってこないといけないので、
嬉しいかと言えば、
必ずしもそうではありません。
でも、
その場にいても、もう頭も手も動かない。
とりあえずは一旦帰ろうという事になります。
そして、一時帰宅したメンバーが
戻ってきて私にこんな話をしました。
帰宅中に、ホームで電車を待っていたら
ちょうど電車が入ってきたとき
その勢いに流されるように
自分もフラフラと、
走っている電車に吸い込まれそうになった・・
話している時の、その人の雰囲気は、
疲れてますアピールをしている訳でもなく
純粋に「あんな経験をしたのは初めて」を
誰かに伝えたいようで、
少し興奮気味に話していました。
その話を聞いた時の自分も
連日の疲れで麻痺していたので、
冗談っぽい返しで流してしまいましたが、
あとになってよくよく考えると
あの極限状態では
最悪のことがおきても不思議ではなく、
とてもゾッとしました。
わたしは、運良く最悪のケースに
遭遇することはありませんでしたが、
しかし、わたしも、そして皆さんも知っています。
最悪の事態が起きてしまったケースが
実際にいくつもあることを。
◆対処方法は、まず自分の状況を自覚すること
「うちの現場はブラックだ」とか
「今月は残業時間がとんでもない事になった」
なんて話しているうちは、
現状のマイナスな部分をちゃんと見ているので
まだ大丈夫です(まだマシという意味です)。
危険で注意が必要なのは、
「良いも悪いもない」
「とにかくやるしかない」
なんて考えている時です。
責任感やリーダーシップの意識が
高い人ほど、こんなふうに考えがちです。
故に、
責任感も高く、将来を期待されていた人が
周りが気がついた時には、
どうにもならない感じになっていた・・
なんて、SEの現場ではよくある話です。
現在、せっかくやる気を持っている人に
水を差しているように感じるかもしれませんが
本当に気持ちがのって作業をしている人は
「とにかくやるしかない」なんて動機づけは
不要なはずです。
「とにかくやるしかない」と考えてやる人は
自分を追い込んででも、
この難局に立ち向かっていこうと
している人です。
確かにその難局を乗り切った時、
成長し、以前よりも自信もつくかもしれません。
しかし、自信がついたからといって
次の難局も絶対に乗り切れるなんて保証は
ありません。
「負けないように」「なんとしても」
「ここが踏ん張りどころ」
なんて考えている時は、
心の糸を最大限の緊張状態にしているかもしれません。
気持ちをおもいっきり強く固めているかもしれません。
張り詰めた糸は、いつかは切れてしまいます。
しなることが出来ない固い木は、
強風でポッキリ折れてしまいます。
そして、
「とにかくやるしかない状況」は現実に起こります。
そしてそれは不可避な場合が
ほとんどかもしれません。
そんな時、
今自分が結構危険な所にいることを
自覚しましょう。
・ここで自分を追い込み過ぎちゃだめ
・少し肩の力を抜いてやってみよう
・自分の心や健康まで差し出す必要はない
そんな風に考えられたら、きっと
「とにかくやるしかない」に対しても
「とりあえず、なんとかうまいこと
のりきれないかなぁ〜」
ぐらいな感じで
対処できるようになります。